日中の有識者で作る「新日中友好21世紀委員会」の日本側座長、小林陽
太郎・富士ゼロックス相談役最高顧問は21日、同委第5回会合が開かれ
た中国・青島で記者会見し、8日の日中首脳会談で靖国神社参拝への明言
を避けた安倍首相の対応について、「なかなかの知恵だと思う。それを受
け入れた中国の首脳も大人の態度だ」と発言、両首脳を評価した。小林座
長は「現段階で黒白をはっきりさせるよう迫るのは、大局的、戦略的でな
い」とする一方、「もうそろそろという時期が来る」とも述べ、いずれか
の段階で明言を迫られるとの見通しを示した。

 

靖国神社の参拝がいちいち首脳会談で話題になるのは、本来であれば好ま
しいものではない。それを話題にしようとするのが中国側だけでなく、な
ぜか我が国内からも靖国神社の参拝に対して注文が付くのが解せない。小
泉前首相がひとまず日にちはころころと変わったものの、在任期間を通し
て参拝をし続け靖国神社の参拝が外交カードとしては使えないものだと、
行動をもって証明しようとしたが、国内がこのような有り様であるから、
安倍首相も小泉前首相のように公約としてはっきりと言わずに、敢えて行
く行かないの曖昧戦術に転換し、日中首脳会談への道筋をつけたと言える
のではなかろうか。

 

首相の立場上、歴史観靖国神社の参拝に関して自由にものが言えない制
約があるのも事実だ。過去の内閣が発表してしまった談話を今更無かった
ことにするには、国際社会の信用を無くすことに成りかねず、結局は過去
の内閣のしてきたことによって現在の安倍内閣も手足を縛られている現状
は変わらなさそうだ。少なくとも途絶えていた日中、日韓の首脳会談を実
現させ、次は北朝鮮瀬戸際外交と如何にしてぶれずに対応出来るかが、
求められている。