元ロシア情報機関員の男性が、亡命先のイギリス・ロンドンで、何者かに
猛毒のタリウムを飲まされた事件で、この男性の入院先での写真が公開さ
れた。写真は、ロシアの元情報機関員、アレクサンドル・リトビネンコ氏
の家族が、病状を広く伝えるために、通信社を通じて公開したもの。髪の
毛は抜け落ち、目もうつろな状態。リトビネンコ氏は依然、重体で、骨髄
移植手術が必要になる可能性があるという。ロシアでは先月、プーチン
権に批判的なジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤ氏が射殺される
事件があった。

 

ロシアはソ連崩壊後、社会主義政策を転換し民主国家への道を歩んでいた
はずであるが、最近のプーチン政権はエネルギー価格の高騰を背景に、ロ
シアをかつてのソ連のような強権的な国家へと変えていこうとしているよ
うに見える。エネルギー事業を国家管理とし、かつてソ連邦を構成してい
た周辺国が反ロシア、親欧米の路線をとろうとするとエネルギーの供給を
ストップし、法外な価格を要求するなど目に余る状態である。果たしてこ
れが民主国家として正しい姿なのかと言えばそうではないはずだ。

 

今回もプーチン政権を亡命先から批判していた元情報機関員の男性やロシ
ア国内で殺害されたジャーナリスト、ポリトコフスカヤ氏の例を見るよう
に、このような言論弾圧は仮に政府が関与しているのであるなら、普通の
民主国家であれば政権はあっという間に倒れるのが普通だ。関与を当然否
定はするであろうが、批判的なメディアを次々に弾圧し親政府系メディア
ばかりにしては、かつてのソ連と大して変わるものではない。我が国のメ
ディアも大々的に取り上げ批判の声を上げるべきではなかろうか。