北朝鮮による拉致被害者曽我ひとみさんは6日、家族4人で新潟県佐渡
市に帰郷して2年になるのを前に、佐渡市を通じて談話を発表した。曽我
さんは「本当の家族そろっての幸福な生活とは言えない。母が一緒にいて
こその家族ではないかと思う」と、一緒に拉致された母ミヨシさんの安否
を気遣い、「来年こそは母の問題が解決され、家族全員が健康でそれぞれ
の夢に向かって努力していきたい」、「どんなささいな事柄でも、母につ
ながる情報が欲しい」と情報提供を呼びかけた。

 

20数年ぶりに帰国した拉致被害者が我が国の土を踏み、帰郷してからの
生活はたまにテレビや新聞で報道されるように、少なくとも北朝鮮のよう
な自由を奪われた状態から比べれば十分な生活をしていると思われる。だ
が曽我さんにとっては一緒に拉致された母親のミヨシさんの問題が解決し
ないまま、自分の家族と我が国で平穏に暮らすことにはなかなか耐えられ
るものではなかろう。文字通り藁をも掴む思いで解決への道を探ろうとす
る姿に、痛ましさを憶えるのである。

 

北朝鮮による拉致は現在進行形であることを忘れずに、安全保障の問題と
同様に北朝鮮へ圧力をかけてでも解決せねばならない。一時は我が国と北
朝鮮の国交正常化交渉の際に拉致被害者の存在を障害であるかのように扱
う一部勢力もあったが、さすがに北朝鮮がミサイル乱射や核実験に踏み切
った現状において、そのような戯言を言うことはないだろう。早急な解決
が望ましいが、拉致一本で北朝鮮を追い詰めるのは難しい。関係各国と確
実な協調関係を築き、北朝鮮と対峙する他あるまい。