安倍晋三首相は7日昼、都内の九段会館で開かれた政府など主催の「北方
領土返還要求全国大会」であいさつし、「ロシアはわが国と利害を共有す
る大事な隣国だ。日ロ関係の発展のためにも最大の懸案である北方領土
題の解決に向け、粘り強く取り組む」と述べた。首相は父親の晋太郎氏が
外相として、外相間の日ロ平和条約交渉を10年ぶりに再開させたことに
触れ、「遺志を引き継いで、平和条約の締結に向け全力で取り組む」と強
調した。大会には関係閣僚や野党、北方領土期成同盟など関係団体の約1
500人が参加した。

 

未曾有の原油価格高騰によってエネルギー大国と化したロシアにとって、
わざわざ我が国に北方領土を返還するメリットは無いと言っても良いだろ
う。火事場泥棒のように旧ソ連北方領土を奪われてから62年目を迎え
たが、これまであまりに無作為に時間だけが経過してしまったことが残念
でならない。我が国内でも2島先行返還論や4島の面積を等分して日露の
国境線とするなどと、決して一枚岩で事に当たってきたとは言えない。そ
れだけ交渉が難航してきたと言うことでもあろう。

 

安倍首相が述べたように、確かに日露の関係は緊密であればあるほど望ま
しいことこの上ないのだが、民主的な国家とは言い難いほど最近のロシア
は変質しつつある。言論の自由が保障されず、政府に迎合するような姿勢
をメディアがとっている以上、我が国が如何に北方領土が固有の領土であ
ることを主張しても、ロシア国内から動きがあるとは考えにくい。亡き父
の遺志を引き継ぐのは立派だが、その遺志を実現するにはそれ相応の困難
が伴うことも忘れてはならない。