ブッシュ米政権がマカオの金融機関バンコ・デルタ・アジアで凍結されて
いた北朝鮮資金約2500万ドルの全額返還を認めたのは、北朝鮮の核施
設の稼働停止・封印を早期に実現するための大幅譲歩と言える。米国は北
朝鮮との米朝協議に応じるなど、柔軟化路線に転換し始めたが、今回の措
置はこの傾向がさらに強まっていることを示すものだ。しかし、このよう
な態度に対する不協和音は政権内部からも聞こえてきており、政策現場で
の混乱も予想される。

 

北朝鮮は、これらの資金を人道支援や教育の目的で利用することを米国と
約束したとされるが、金融制裁の解除は過去に北朝鮮がしてきた米ドルの
偽造や偽タバコのマネーロンダリングなどの犯罪行為を見逃すことを意味
し、譲歩し過ぎとの評価は止むを得ないだろう。何より北朝鮮は国際機関
による人道目的の食糧支援を軍用に流用してきたており、最近でも国連開
発計画が外貨の不正流用疑惑を受け、北朝鮮鮮向けの開発支援事業を停止
しているのだ。

 

金王朝」に直結されていたとされ、凍結されてきた2500万ドルが、
本当に北朝鮮国民のために使われるのか、徹底した監視が無い限りは「人
道目的」との言葉を額面通りに受け取めるわけにはいかない。あくまで北
朝鮮の核施設の稼働停止・封印を求める米国とそれを見透かしている北朝
鮮、超大国・米国が振り回されているように見えるのは決して幻影では無
さそうだ。