私有財産の法的保護を定めた「物権法」が可決されたばかりの中国で、再
開発に伴う立ち退きに反対する夫婦が注目されている。自宅周囲の土地は
業者によって約10メートルの深さに掘られ、まさに「陸の孤島」。生活
も難しい状態だが、補償金の増額などを求める夫婦は開発業者と対立した
まま。裁判所は22日までの立ち退きを勧告したが、夫婦は受け入れず、
「史上最強の居座り」と呼ばれている。

 

全人代で可決された個人の土地の私有を事実上認めた「物権法」によって
各地方政府が進めてきた強制的な立ち退きによる開発には、一定の歯止め
がかけられそうだ。この法律が中国にとってパンドラの箱となるかはしば
らく様子見が必要だろう。重慶市で立ち退きを拒否している夫婦のように
開発業者が周囲を掘り下げると言う失策をしたおかげで、メディアを通じ
てアピールすることが出来たのは稀有な例でしかない。

 

さすがに衆人が見守る中で、強制的に立ち退きを実行するのは難しいとは
言えども、このようなことが起きてしまう中国の実態を考えずにはいられ
ない。格差が広がり続ける都市部だけならまだしも、農村と言う手付かず
の中国にとっての暗部が横たわる。難しい舵取りが必要とされるだけに、
まずは物権法で庶民の立場を理解したと思わせるのは、中国政府も損では
ないのではなかろうか。