自民党総裁選に立候補した福田康夫官房長官麻生太郎幹事長は17日、
大阪、高松両市で初の地方での街頭演説に臨んだ。大阪では両氏とも北朝
鮮の拉致問題に言及。福田氏は「私の手で問題を解決したい」と言明、対
話を通じた日朝国交正常化の実現に決意を示した。麻生氏は「圧力なしに
対話は成り立たない」と強調した。福田氏はちょうど5年前の02年9月
17日に小泉純一郎前首相が初訪朝し、拉致被害者の帰国に結びついたこ
とに触れつつも「残念ながらその後の進展がない」と指摘。「拉致が解決
し、北朝鮮が核もミサイルもやめれば国交ができる。日本海を中心とした
地域が次の発展を迎える」と訴えた。

 

小泉前首相の電撃的な訪朝によって、拉致問題がようやく公式なこととし
て取り上げられることとなった。それまでは拉致など存在しないと言う北
朝鮮の姿勢と、国内でも半信半疑で拉致被害者の家族は何を頼って良いの
か本当に困ったことであろう。5年前の訪朝によって金正日総書記が拉致
の事実を認め、拉致被害者5人が帰国したものの、他の拉致被害者は死亡
した、自殺したなどと信用に足る情報が出てきたとは言い難かった。その
ままずるずると時間だけが経過していき、北朝鮮のミサイル乱射や核実験
によって、朝鮮半島の安全保障の問題にシフトしてしまい、さらには米国
の対朝接近もあり、我が国の立場は非常に難しい状況にある。

 

ただ、福田氏の対話を通じた日朝国交正常化と言うものは、どのようなプ
ロセスを経てなされるのか不明ではあるが、拉致を横に置いておいたまま、
とりあえず国交正常化をするような真似はしないことを祈りたい。むろん
我が国にとって、ミサイルや核の問題は拉致と同様に深く関係してくるこ
とだけに、解決すべきことを放って国交正常化をするような事態にはなら
ないであろう。麻生氏は安倍政権同様に圧力をかけて対話を引き出すとし
ているが、これも手詰まり感がある以上は現状通りのままでは済まないの
ではないか。拉致被害者の家族も高齢化が進み、文字通り残された時間は
確実に減っている。難しい問題だが逃げずに次期政権は真っ向から取り組
んで欲しいものだ。