新テロ対策特別措置法案が参院で審議入りした28日、防衛省の実力者と
して防衛政策を長くリードしてきた守屋武昌前防衛事務次官が逮捕された
ことで、政府・与党には動揺が広がっている。一方、野党からは「司直の
手で防衛利権の全容解明をしてほしい。政界工作の有無をつかんでもらい
たい」などと防衛省スキャンダル解明を求める声が相次いだ。野党側は勢
いづいており、新テロ特措法案の国会審議に影響が出るのは確実だ。

 

念願の省昇格を昨年実現しながらも、前事務次官が逮捕されると言う醜態
をさらし揺れる防衛省。国防の一翼を担うはずの事務方のトップが収賄
疑での逮捕されるようでは、もはや組織的に腐敗が進んでいると言わざる
を得ないのではないか。これでは必死で働く現場の自衛官は浮かばれない
であろうし、武器の調達にも大きな影響が出てくることは間違いない。何
より国民の信頼を失ったに等しいのだ。

 

「一人を以(もっ)て国興り、一人を以て国滅ぶ」。9月3日の離任式で、
中国の故事を「好きな言葉」として紹介した守屋前次官。「国の防衛に従
事する人の心意気を示す言葉として、いつも忘れず心がけました」、その
言葉が今となっては空虚に響く。防衛行政を貶めたことを守屋前次官がど
う思っているかはわからないが、「防衛省天皇」とまで揶揄された実力
は別の形で発揮して欲しかったものだ。