北京の人民大会堂で28日行われた福田康夫首相と温家宝中国首相の首脳
会談。直後の共同記者会見で「台湾独立」に対する表現をめぐり、福田首
相が顔色を変える一幕があった。「(独立を)支持しない」という福田首
相の発言を温首相が説明。これを会場で日本語に訳した通訳が「独立反対
を表明した」と強い表現に「誤訳」したためだ。会見中に、すぐ資料を取
り寄せた福田首相は自らの発言が「支持しない」だったと改めて説明する
はめに。台湾問題の微妙さが改めて浮き彫りになった瞬間だった。

 

年末の慌ただしい中での訪中は、台湾が進める「台湾名義」での国連加盟
の是非を問う住民投票に対する反対姿勢を福田首相から引き出すために中
国が設定したものとされている。すでにライス米国務長官が「挑発的な政
策で、台湾海峡の緊張を高める」と中止するように警告を発している。そ
れだけに我が国からも反対であるとの発言を引き出せれば中国としては満
足なのであろう。そこは福田首相が中国側の誤訳を自ら修正してみせたこ
とで思惑を防ぐことは出来た。

 

我が国と台湾との関係は国交は無いものの、同じ民主国家として友好的な
ものであって欲しいが、すぐ近くの大陸には中国と言う大国が露骨な干渉
を続けており、我が国も本音を出せないと言う苦しい事情がある。現状維
持が我が国にとっても、海を隔てた米国にとっても望ましいことであろう
が、このような玉虫色の決着がいつまでも続けられるとは限らない。台湾
問題は想像以上に微妙なものとなっているのだ。