民主党川上義博参院議員は、日銀人事で武藤敏郎総裁案を否決した12
日午前の参院本会議の採決に加わらず、棄権した。川上氏はこの後、記者
団に「武藤氏は長年の友人で、総裁の任に十分適合する人材だと確信して
いるが、党の方針に逆らうわけにはいかなかった」と説明。「政治力学で
武藤氏が犠牲になったのは大変残念だ」と述べた。また、民主党会派に参
加する無所属の広田一森田高両氏も武藤氏の採決を棄権。民主党の大江
康弘、木俣佳丈両氏、野党系無所属の松下新平氏は欠席した。このほか、
民主党統一会派を組む新党日本田中康夫代表は、白川方明副総裁案の
採決を棄権した。これに関し、民主党鳩山由紀夫幹事長は都内で記者団
に対し「(欠席や棄権は)党に反する行動とは思っていない。今のところ
処分するつもりはない」と語った。 

 

日銀は言うまでも無く我が国の中央銀行である。通貨の番人として日銀の
総裁は市場の動きを見極め、適切な対応をとることが求められている。そ
れだけに日銀総裁が不在などと言う状態を一日たりとも作ってはならない
のである。だが、いわゆるねじれ国会のもとで、野党は参院を押さえてお
り、与党の出した人事提案を否決してしまった。その理由は「日銀の独立
性が保てない」ということらしいが、果たしてそれが本当の理由なのであ
ろうか。与党を揺さぶるための反対のための反対なのではないかと言う疑
念はどうしても消えない。米国のサブプライムローン問題以降、景気後退
が予想される中で、我が国の中央銀行総裁の後継が政治のよって振り回さ
れている状況は、世界から見れば奇異に見えることだろう。ますます我が
国に対する信頼が失墜することになりかねない。非常に残念なことだ。