中国西部のチベット自治区ラサで14日起きたチベット仏教の僧侶らの大
規模な抗議デモで、国営新華社通信は15日、10人が死亡したと伝えた。
今回の騒乱で、死者が確認されたのは初めて。外国人に死傷者はいないと
いう。一方、ラサ発の新華社電は同日未明、デモ鎮圧のため警官隊が威嚇
発砲し、一定量催涙弾を使用したと報じた。騒ぎは14日夜、下火にな
ったが、警官隊が一部を封鎖し、厳重な警戒態勢を敷いているもようだ。
中国の旅行会社によると、当局は内外の旅行者がチベット自治区に入るこ
とを禁止する通知を出した。

 

中国にとって北京五輪前に、このような事件が起きたのは大きな痛手にな
ることだろう。チベット亡命政府は未確認情報として警察の鎮圧による死
者が約100人に達したとする声明を発表しており、抗議行動はラサから
チベット全域に広がったとしており、参加した人々はラサだけで1万ー2
万人に上ったとしている。この数字がどれだけ当てになるかは置いておく
として、中国はこれまでも人権問題で欧米に注文を付けられ、北京五輪
催に向け、民族融和をアピールしてきた姿勢が、これによって脆くも崩れ
去ったと言えるであろう。中国は「暴動はダライ一派が組織、計画したも
のだ」と切って捨てているが、チベットは中国によって占領・併合された
土地である。その歴史を忘れたとは言わさない、歴史を鑑とするのは中国
もまた同様なのである。