中国チベット自治区ラサで発生した僧侶、市民らの騒乱後、2億1000
万人のネットユーザーをかかえる中国ではネット統制に拍車がかかった。
国際的な動画投稿サイト「You Tube」はアクセス禁止。メール検
閲も厳格化され、掲示板、チャットも監視がきつくなっている。ネットは
中国においてしばしば情報統制のほころびとなってきたが、ネット人口が
少ないチベットにおいては徹底統制にほぼ成功しているといえそうだ。Y
ou Tubeは、ミャンマー民主化要求デモ発生時など国内世論に影
響を与えそうな国際事件が発生するたびアクセス禁止となっていた。BB
Cなど今回の事件の動画が見られる海外メディアサイトも軒並みアクセス
禁止。海外のチベット独立派や人権団体のサイトはもともとアクセス禁止
なため、海外の視点からの報道は国内ではほぼ得られない。一方、チベッ
ト側のネットユーザー管理も強化。チベット自治区内のネットユーザーは
07年末でわずか32万人。数は極めて少なく徹底管理がしやすい。記者
あてのラサ発のメールも届かないものが多く、ネット上のチャットルーム
は開くだけで画面にサイバーポリスのアイコンが浮かび牽制をかけてくる。

 

中国の情報統制はインターネットの世界でも例外では無い。これほどまで
に情報統制に力を入れるのは、漏れては困る情報があるのもそうだろうが、
不確かな情報が流れて、それがいつの間にか尾ひれがついて全国に波及す
ることではなかろうか。例えば今回のチベット周辺での動乱で、犠牲者が
出たと言う情報が、いつの間にか多数の犠牲者となり、虐殺が行われたか
のような伝聞となっては困るであろう。インターネットの検閲には数十万
人と言われる“サイバー・ポリス”が投入され、ユーザーを逐次監視して
いるのだ。アクセス禁止となった「You Tube」は個人が情報を発
信出来る新たなメディアと言えるが、そこに辿り着けなくさえすれば情報
の発信のしようがない。さらに外から情報を発信しているチベット独立派
や人権団体のサイトもアクセスを禁止してしまえば、中国のネットユーザ
ーが自ら手に出来る情報は官製のものばかりになる。そのようにして情報
が統制されては、もはやインターネットとしての役割など果たさないだろ
う。正しい情報が伝わらず、捻じ曲げられた情報のみが伝わってくるよう
では、他国からは逆に不信の目で見られることになるのだ。それよりも国
内の目を潰す方が優先であると言うのなら、それもまた考えものである。