与野党新人の一騎打ちとなった台湾の総統選は22日、投開票される。
数値目標を列挙した経済政策で優勢が報じられていた最大野党国民党の
馬英九氏を、与党民進党謝長廷氏がチベットの大規模暴動などを追い
風に猛追している。民進党政権を「無能」と批判し、8年ぶりの政権交
代を訴える馬氏が台湾紙の支持率調査で一時は謝氏に20−30ポイン
トの差をつける中、謝氏は国民党の経済政策の「両岸共同市場」化構想
を「“一中(一つの中国)市場”化で、やがて政治的にも統一される」
と攻撃。「大陸から労働者や農産品などが入り込み、サラリーマンは失
業し、農家は大打撃を受ける」と生活感に訴えつつ、馬氏の“親中”イ
メージへの警戒感の増幅を図った。馬氏が浸透に努めてきた中南部の有
権者に動揺があるとされ、馬氏は「謝氏はわれわれの主張をねじ曲げ、
不当に中国色に塗ろうとしている」と防戦に努める。チベットの大規模
暴動に関しては、謝氏が「馬氏が総統になれば台湾人民も同じ目に遭う」
などと訴え有権者の投票行動への影響が注目されている。

 

一つの国家としての台湾と言う理念を打ち出し、台湾人としての意識を
高揚させてきた与党民進党であったが、1月12日に開票が行われた立
法院選挙では最大野党・国民党に大敗北を喫し、総統選でも同じような
結果に終わるのではと予想されていた。だが、与党候補も巻き返しを図
り、大差を付けられていた支持率も、その差は縮まりつつあった。韓国
の大統領選のように、理念では無く実利を求める動き、つまり停滞する
経済を何とかして欲しいと言う視点から野党候補に支持が集まっていた
のであろう。だが、チベットの動乱を見て本当に経済だけを追求するこ
とが自分たちのためになるのか、と投票直前でふと考え直した有権者
多いのではないか。常に中国と言う大国の圧迫を受け続けてきた台湾に
とって、チベットは将来の台湾だとの見方も間違いではない。ただし、
与党候補が危機意識に訴えたとしても、経済面では中国と台湾の関係は
もはや切っても切れないところにある。過剰なまでに中国の脅威を訴え
ることはかえって逆効果となる恐れもある。いずれにせよ、明日の未明
には大勢が判明する。その結果次第で日台関係も大きく変化していくこ
とであろう。