中国チベット自治区の内外で3月14日以降起きた騒乱で、国営・新華
社通信は21日夜、死者は19人、負傷者は623人と報じた。死者は
16人としてきた従来の数字を上方修正した。死亡者のうち18人は一
般人、1人は警官。ラサでの負傷者のうち241人は警官、残りが市民
となっている。インド北部ダラムサラチベット亡命政府は死亡者につ
いて80人としており、中国当局発表との数字の差は依然大きい。AP
通信は21日、亡命政府の情報として騒乱が波及した甘粛省内でここ数
日、チベット系の19人が死亡したと伝えていた。死亡した経緯などに
は触れなかった。一連の騒乱で死亡したチベット系はこれで計99人と
している。インドに拠点を置く非政府組織、チベット人民主化センタ
ーによると、中国は自治区のほか、騒乱が同じく起きた甘粛省四川省
にも軍部隊を増派、鎮圧を強めている模様。

 

当局の発表のみで信じるにはあまりに情報が少なすぎるのではないか。
チベット自治区には海外のメディアは入れず、ひたすら官製報道を垂れ
流す姿勢は情報統制に長けた中国らしいと言えばらしいのだが。しかし
問題解決が延び延びになることで、北京五輪への影響はますます避けら
れない。有力スポンサーの一つであるコカ・コーラは「北京五輪での役
割からおりる予定はない」としながらも、「チベットの状況を深く憂慮
する」と、一歩踏み込んだ声明を出し、状況を看過出来ないとの判断を
示している。それでもなお、中国側はチベット独立急進派の「チベット
青年会議」を「ダライ・ラマ14世集団に所属する組織」がインターネ
ットを通じチベット民族の決起を呼び掛けたとして、この動きをダライ
・ラマ14世と暴動を結び付ける証拠に挙げ、あくまでチベット側に問
題があるとの姿勢を崩していない。そればかりか、より強硬になってい
るとも言えるだろう。新華社は「公式発表を信用せず、人権団体と西側
メディアは人の不幸を喜び、騒乱を楽しんでいる」と非難しているのが
良い例であろう。我が国でも、本日デモが行われたようだが、この問題
は中国の対応如何では相当長引くこととなるのではなかろうか。