台湾の総統選挙で、「中国は一つ」と主張する野党国民党の馬英九候補が
当選したことで、中国は大きな安堵感を覚えたに違いない。中国と台湾に
よる関係改善に向けた政治交渉が始まる可能性も浮上した。中国の対台湾
政策はこれまで「独立の動きをいかに食い止めるか」を中心にしてきたが、
「馬総統」の誕生で「関係改善交渉をいかに始めるか」に大きく転換され
るとみられる。昨年秋の党大会以後、中国の指導者は台湾問題に関し「武
力行使」や「問題の解決を無期限に先延ばしにできない」など、これまで
にたびたび使われてきた刺激的な言葉を控えた。台湾の有権者に対する威
嚇が中国への反発を生み、総統選挙で民進党を利することを懸念したとみ
られる。国民党の勝利で中台間の経済交流も一層発展しそうだ。

 

この結果が中台関係、さらには日台関係にどう影響してくるか、注視して
いかねばなるまい。台湾人の政党として独立志向の強かった民進党は立法
院選挙でも敗北しており、その力は大きく削がれたと言っても良いだろう。
中国国務院台湾事務弁公室の李維一報道官は「両岸関係の平和的発展は両
岸同胞の共通の願望であり、ともに努力したい」と談話を発表し、民進党
政権下で後退した中台関係を復旧したいとの意思を示した。むろん新総統
となる馬英九氏としても、急激な変革を望むわけもないであろうし、緩や
かな関係改善を進めることが当面は続くことになるだろう。台湾にとって
中国は経済面では重要なパートナーとなっているが、政治面では立派な民
主主義国家となった台湾が、中国とどの程度距離を置いて付き合っていけ
るか、その対処が問われているのだ。