中国当局が3月中旬のチベット騒乱以後、チベット仏教を中心に各宗教団
体の聖職者らに対して、共産党大会の文献学習会など愛国主義教育を強化
し始めた。騒乱が他の地方に拡大することを未然に防ぐことが狙いだが、
当局のやりかたは逆に僧侶らの宗教意識を刺激し、政府との対立を深める
可能性もある。「蘭州日報」などによると、甘粛省内のチベット仏教の僧
侶ら約300人が24日、同省蘭州市内のホテルに集められ、ダライ・ラ
マ14世への批判が行われたほか、北京五輪関連のビデオが上映された。
政府からは「党と政府との歩調を常に一致させること」などが要求された
という。同様の研修会や学習会はこのほかに青海省四川省でも行われた。
23日にラサ入りした孟建柱公安相は「寺院への愛国主義教育を深化させ
なければならない」と強調、徹底した愛国キャンペーンを始める考えを表
明していた。

 

何故、中国は一番やってはならない方法で宗教を締め付けようとするので
あろうか。確かに宗教は人と人とを強固に結びつけるものであり、それが
反政府活動に転じれば、それなりの脅威となるのは間違いないだろうが、
チベット仏教の僧侶を前にダライ・ラマの批判をすれば、それこそ逆効果
ではないのか。愛国主義の強制をしたところで、チベットの人々が中国に
なびくわけも無く、反発ばかりが強まるばかりであろう。聖職者を反政府
勢力であるかのように捉え、共産党と政府と歩調を合わせろなどと良く言
えたものだと、ある意味で感心してしまう。チベットの動乱で国際社会が
中国を見る目は相当変化したであろうし、今後もその見る目を変えてはな
らない。無神論を信奉する共産党の考えそのものが、チベット仏教を始め
とした宗教団体に受け入れられると思う方がおかしいのである。動乱がこ
れで終わるとはとても思えないのだ。