ドキュメンタリー映画靖国 YASUKUNI」の東京都内での上映が
すべて中止された問題で、文化庁に「作品を見たい」と要請した自民党
稲田朋美衆院議員が1日、共同通信の取材に応じ「上映中止は残念としか
言いようがない。映画館側が自粛する理由は何もない」と述べた。中止の
主な理由とみられる右翼団体の街宣活動については「そういう勢力が入っ
てくることは迷惑だ。街宣活動で表現や政治活動の自由が制限されること
は、あってはならない」と指摘した。上映中止のきっかけと指摘される国
会議員向け試写会が3月に開かれた経緯を問われると、「文化庁所管法人
助成金が支出されたことを週刊誌の報道で知り、『映画を見せてほしい』
文化庁に求めたが、『公開前に』とか『試写を開いて』などとは言って
ない」と釈明。「試写会が開かれたのは、文化庁と配給会社の判断だ」と
述べた。

 

映画館の判断によるものとは言え上映中止は残念である。右翼団体が抗議
や街宣活動を起こせば、映画の上映を断念するとあっては、今後もこのよ
うな事態を招くことになるであろうし、このような妨害行為には毅然とし
て立ち向かわねばなるまい。今回、インタビューを受けた稲田議員の所属
する議連がこの映画の試写を要請したことで、それがあたかも事前の検閲
であるとの論調をもって非難をされているが、少なくとも国民の税金がど
のように使われているのかを、チェックする義務が国会議員にはあるので
はないか。仮にチェックもせずに放置し、不正確な描写や表現、特定の主
義主張が前面に押し出されたような映画であった場合、それこそ批判は免
れないだろう。少なくとも映画館側が上映を自粛したことと、試写を要請
したことは切り離して報道すべきだ。まるで試写を要望したことが、今回
の自粛にまでつながっているような報道の仕方は大いに疑問である。