米大統領選挙の民主党指名候補獲得を目指すヒラリー・クリントン上院議
員は7日の声明で、チベット問題などでの中国の対応に抗議するため、ブ
ッシュ米大統領に対して北京五輪の開会式への出席を取りやめるよう求め
た。米議会ではペロシ下院議長らが開会式の出席見送りを訴えているが、
大統領選の候補が不参加を求めたのは初めて。今後、大統領選挙でチベッ
ト問題が争点となる可能性もある。クリントン氏はチベット問題のほかに
スーダンダルフール問題でも中国政府の対応を批判した上で「対応に大
きな変化がない場合、大統領は開会式に出席すべきではないと考える」と
強調。中国政府に対しては「この機を生かし、人権と団結を敬うという人
類共通の願いに応えるよう促す」と求めた。一方、ライバルのオバマ上院
議員は最近のインタビューでチベットダルフール問題を軽視しない考え
を示す半面「世界を一つにするための五輪を政治抗議の場に変えることに
ためらいもある」と述べるにとどめている。

 

欧州では聖火リレーへの妨害や抗議が相次いでいるが、米国内でもチベッ
ト問題に対する姿勢に注文がつき始めたようだ。パリでは抗議者が聖火ラ
ンナーを取り囲む厳重な警備を突破しようとし、そのたびに聖火リレー
中断されるなど、不穏な空気が漂った。9日に聖火を迎える米国のサンフ
ランシスコでは英語で「一つの世界、一つの夢 チベットに自由を」など
北京五輪のスローガンをもじった横断幕がサンフランシスコの観光名所
金門橋」に掲げられ、聖火リレーが無事に終われるような雰囲気では無
さそうである。サンフランシスコの市議会では中国の人権問題を理由に、
聖火を「警戒と抗議をもって」迎えるとする内容の決議を採択しており、
歓迎ムードには程遠いものがある。抗議と妨害が続くことに憂慮したIO
Cのロゲ会長も、「IOCは深刻に憂慮しており、チベット情勢の平和的
な解決を求める」と述べている。米国のムードが変わってくるとなると、
ますます厳しい「聖火リレー」となるであろう。