中国政府のチベット政策に対する抗議活動のシンボルになっている「雪山
獅子旗」が、北京五輪の競技施設から締め出されることが10日、明らか
になった。国際オリンピック委員会のロゲ会長は同日、北京で開いた記者
会見で、「雪山獅子旗」を念頭に置いたとみられる「2つの旗を掲げるこ
とはできるのか」との質問に、「地域の旗を掲げることは認められるが、
外国人がそれを掲げ、プロパガンダとみられる場合は許されない」と答え
た。IOC憲章は五輪関連施設での政治的な意思表示を禁止しているが、
シドニー五輪陸上女子四百メートルで金メダルを獲得したキャシー・フリ
ーマン(豪州)は、ウイニングランの際、アボリジニの旗と豪州国旗を掲
げた。しかし、「雪山獅子旗」は政治色が極めて強い。中国国内では「チ
ベット独立の意思表示」とみなされ、掲揚した場合は取り締まりの対象と
なっている。今年3月にはチベット自治区ラサで「雪山獅子旗」を市中心
部の広場で掲げたチベット民族の容疑者が逮捕されており、中国人選手が
掲げることも、事実上、不可能だ。

 

政治色の強いものは締め出す、その姿勢そのものはわからないものではな
い。平和の祭典である五輪においては、チベット問題がメインテーマにな
ってはおかしい。ただ、ロゲ会長の言うように五輪の競技施設では禁止さ
れるものの、むしろそれ以外の場であれば、掲げることは可能である。競
技場の外を取り囲むように旗を掲げアピールすることも出来るが、中国国
内では「雪山獅子旗」の掲揚そのものが取締りの対象となるとされており、
外国人もまたその対象となるのであろうか。聖火リレーへの抗議や妨害が
続くことを、中国は苦々しく思っているに違いないが、チベット問題が多
くの少数民族を抱える中国にとっての急所なのは、誰もが知るところであ
る。旗の掲揚が不可能になろうとも、チベットの支持者達はあらゆる方法
で、北京五輪への圧力を強めていくことであろう。旗の掲揚が出来ないの
なら、それをプリントしたシャツを着たり、ペイントすることも可能であ
る。旗で無ければ良いと言うのなら、それは彼らにとってはもっけの幸い
ではなかろうか。