チベット問題での対中批判や北京五輪聖火リレーの妨害に反発した中国の
フランスに抗議する行動は20日も各地で起きた。国営新華社通信による
武漢陝西省西安黒竜江省ハルビン山東省済南、同青島、遼寧省
連、雲南省昆明安徽省合肥などでデモや集会が相次いだ。19日に20
00人を超す反仏デモが起きた武漢市では20日、約2000人の市民が
フランス系スーパー、カルフール前で「中国から出て行け」と声を上げた。
新華社通信によると、西安ハルビン、済南でもカルフール前で「中国を
軽く見るな」「五輪を支持しろ」と抗議が続いた。北京のフランス大使館
周辺は道路をロープで封鎖した。20日付の中国共産党機関紙「人民日報」
は「冷静で理性的な愛国主義の表現」を求める論評を掲載。抗議行動が当
局の統制を超えて拡大することを警戒している。新華社通信も「カルフー
ルが扱う製品の80%は中国製で同社は北京五輪を支持している」との記
事を配信した。

 

これらの反仏デモは自然発生的に起きたわけではなかろう。中国ではデモ
や集会は当局に届け出が必要であり、2000人ものデモとなればいわゆ
る官製デモと考えるのが普通ではないか。19日の武漢でのデモの中心メ
ンバーだった自営業の男性は20日のデモへの関与を否定し「我々のデモ
中国当局と相談して計画した」として「官容認デモ」であったことを認
めている。当局にとってはガス抜きとして反仏デモを許容したのであろう。
それゆえの官製デモであったと言えるわけだが、無許可でのデモまでは許
容しない姿勢だ。中国共産党機関紙「人民日報」が「冷静で理性的な愛国
主義の表現」を求めると釘を刺したように、大きなエネルギーとなるデモ
が暴走することを当局が恐れるのも無理は無い。3年前の反日デモは破壊
行為をともなう暴動に発展し、ガス抜き程度ではとても済まない状態に陥
った。ガスを抜くどころか、それが爆発してしまえば中国も収拾するのは
一苦労だ。この反仏デモは長続きしないと予想される。