一般国民から選ばれた裁判員が刑事裁判の審理に加わる裁判員制度の施行
まで、21日であと1年となる。今年7月15日からは裁判員候補者名簿
の作成が始まり、11〜12月には名簿に記載された候補者に通知が届く
など、スタートに向けた準備は年内にも本格化する。しかし、国民の参加
意欲は現在も高いとはいえず、理解を促進するため、さらなる啓発活動の
強化が求められている。制度のスタートに向けて、今夏に始まるのが各地
裁による来年の裁判員候補者名簿の作成だ。具体的には、裁判員裁判を実
施する各地裁が7月15日以降に、管内の自治体にどれぐらい有権者がい
るかを照会し、9月1日までに各自治体に必要な裁判員候補者数を知らせ
る。選挙人名簿からくじ引きで作成された名簿を基に、各地裁は「裁判員
候補者名簿」を作成。記載された人に名簿に載ったことを通知する。実際
裁判員裁判の対象となる事件は、来年5月21日以降に起訴されたもの
が対象で、始まるのは早くても7月下旬以降の見込み。初公判の6週間前
までに、裁判員候補者には地裁から呼び出し状が届くことになっている。

 

裁判員制度の施行まで残り一年となったにも関わらず、制度そのものが国
民に浸透しているとは言い難い。4月に発表された最高裁の意識調査では、
「あまり参加したくないが義務なら参加せざるを得ない」が45%、「義
務であっても参加したくない」が38%と、消極的な人も含めれば80%
以上が参加に難色を示している。確かに裁判官は閉鎖的な世界で過ごして
いるうちに、意識そのものが一般国民と乖離してしまう恐れがある。その
ために国民には理解しがたい判決が下されたりする可能性は否定出来ない。
だが、それだけに司法とは非常に専門的な知識が問われることであって、
普通の仕事をしている人がいきなり裁判員として呼び出されることに、抵
抗や不安を感じるのも無理は無かろう。日本法医学会と最高検裁判員
心理的負担を軽くするため、司法解剖の遺体写真の代わりにイラストやコ
ンピューターグラフィックスを使った立証を積極活用する方針を決めたよ
うだが、問題とすべき点が何かずれている感すらある。果たしてきちんと
制度が機能していくのであろうか、大きな不安が残るのだ。