「(福田康夫首相の出身の)わが派は一番謙虚に頭を下げて『皆さんのお
かげです』という姿勢を取らなければいけない」。自民党森喜朗元首相
は5日の町村派総会で、同派代表世話人中川秀直元幹事長が著書出版な
ど活発な動きを見せていることに関し、こうクギを刺した。また、森氏は
「ありがたいことに、わが党の総裁候補とうわさされる方々は誰も首相の
足を引っ張る動きをしていない」と指摘。その上で「苦労している福田さ
んのため、どういう態度を取るべきか政治家ならよく分かるはずだ」と語
った。同派では4日、安易な消費税増税に反対する中川氏の著書をテキス
トにした「中川勉強会」が発足。こうした「派中派」結成とも受け取られ
かねない動きが森氏のかんに障ったようだ。森氏の隣りに座っていた中川
氏は黙ってうなずくだけだった。 

 

中川氏は森政権時代に官房長官を務めるも、噴出した愛人問題で失脚した
かに見えたが、小泉政権では国対委員長、安倍政権では幹事長を務めるな
ど清和会が首相を輩出し続けてきた流れに乗って、今なお自民党内では力
を保っている。ただ中川氏が所属する清和会は自民党の最大派閥でありな
がらも、4代続けて首相を輩出したことによる他派のやっかみもあるであ
ろうし、さらには会長を置かずに集団指導体制としたことで、派内の実力
者達がそれぞれに動いているような感もある。森元首相は最高顧問として
クギを刺したつもりかもしれないが、すでにそれぞれの思惑で事が動き出
した以上は、そう簡単には止まらないであろう。福田政権が低空飛行を続
ける中で、ポスト福田を狙うのは他でもない福田首相の出身派閥の面々な
のかもしれない。