中国・雲南省昆明市で発生した公共バス連続爆破事件では、「北京五輪
のテロではないか」として、国民の間に不安が広がっており、中国外務省
の劉建超報道官は22日、定例記者会見で「五輪との関係は見いだせない」
と指摘、沈静化に努めている。首都のテロ警戒は一段と強化されそうだが、
地方の末端に広がる社会不満や潜在化するテロを完全に押さえ込むことは
不可能で、指導部が治安能力を問われかねない状態になることも考えられ
る。公安省は北京からテロを含む刑事捜査の専門家チームを現地に派遣、
組織的な背景による犯行かどうか爆発物の詳細や手法など捜査を本格化さ
せた。華僑向け通信社、中国新聞社などによると、爆薬にニトロ化合物が
使用された。一方、当局は炭坑などで用いられるダイナマイトの一種との
見方を示しているという。

 

北京五輪前にテロが起きては、中国の威信にかかわる問題である。今回の
公共バス連続爆破事件は小規模だったとは言え、死者も出ており決して無
視出来ない事件のはずだ。このようなテロが地方で頻発すれば、北京を固
めている部隊も振り向けねば、地方軽視との批判も受けかねず、政府は難
しい対応を迫られていると言えるだろう。是が非でも北京五輪中に、特に
外国人を巻き込んだようなテロを起こさせないとの立場であるなら、地方
の小規模なテロには目をつむって首都の守りに専念する。そうまでして守
らなければならないものなのか、大いに疑問ではあるが、都市と地方の格
差が広がっていく中で、地方の不満がテロを目論む勢力と結びつくことを
最も警戒せねばならないのではないか。とりあえず北京五輪を乗り切れば
良い、などと言う浅はかな対応を取るようなら、必ずや手痛いしっぺ返し
を食うことであろう。