2010年に発足する社会保険庁の後継組織「日本年金機構」が、懲戒処
分を受けた社保庁職員を一切採用しないことになった。政府は自民党案を
受け入れ、29日にも基本計画を閣議決定する。社保庁は不採用者の範囲
を限定しようとしたが、総選挙を意識した自民党に修正を迫られ、3度目
で決着した。ただ採用に関心が集中し、適切な業務運営ができるかという
視点は素通りした。「年金機構は懲戒処分を受けた職員は正規、非正規を
問わず採用しないことにする」。自民党が23日開いた厚生労働部会など
合同会議の冒頭、「社会保険庁等改革ワーキンググループ」の尾辻秀久
査がこう述べると十数分後には了承された。

 

ずさんな年金の管理が問題となった社会保険庁は、安倍政権時に解体が決
まり、日本年金機構として2010年に再出発することとなった。与党に
とっては年金問題は鬼門そのものであり、年金の未加入期間があった無か
ったの些細なことから始まり、いわゆる消えた年金によって国民の怒りは
最高潮に達したと言えるだろう。それが昨夏の与党の参院選大敗につなが
ったのは間違いなく、社会保険庁憎しの声が出てくるのも仕方あるまい。
ずさんな管理の責任を与党は押しつけられ、国民の怨嗟の声を嫌と言うほ
ど浴び、さすがに次の衆院選まで年金問題で足を引っ張られては敵わない
だろう。厚生労働省は抵抗したようだが、さすがにここで折れては何のた
めに解体を決めたか、意義が薄れてしまう。ただ、確かに採用にのみ関心
が集中してしまったのは、如何なものかとは思うが。