来日中のチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世は2日、都内のホテ
ルでインタビューに応じ、今月17〜22日にインド北部ダラムサラで開
く亡命チベット人代表による特別会議で、中国との対話路線の是非につい
て議論する考えを示した。ただ自身は「中立的な立場」を堅持し、今後の
方向性を議論に委ねる意向を強調した。北京では現在、ダライ・ラマの特
使と中国当局者による対話が行われている。ダライ・ラマは「(今年3月
チベット暴動という)悲劇以降、中国政府は非常に透明で開放的に対処
する」と期待していたが、その後の対話でも中国側が前向きに対応せず、
チベット内の状況が悪化していることを挙げ、「中国政府への信用は薄く
なり続けている」と失望感をあらわにした。 

 

今年3月に起きたチベットの動乱は、当時北京五輪を控えていた中国にと
って一大事となった。世界中がチベット問題に注目したこともあり、実務
者レベルでの対話路線を取るようになっていたが、現実的には「いたると
ころに中国人民解放軍が駐留している。秘密警察要員も多数入り込んでお
り、チベット人は厳重な監視下に置かれている」とダライ・ラマ14世が
言うように、チベットの置かれた現状は悪くなりこそすれ、良くなる気配
は無い。対話路線に不満を憶える亡命チベット人も数多くいることだろう。
状況が改善されずに、ただいたずらに時間だけが過ぎていくのは、耐えら
れないはずだ。そして、世界的な金融危機と言うこともあるだろうが、あ
れだけフリーチベットと叫ばれたのが嘘のように、消えてしまったことは
悲しむべきことではなかろうか。