トヨタ自動車は、豊田章男副社長が社長に昇格するトップ人事を固めた。
渡辺捷昭社長は副会長に就任し、張富士夫会長は留任する方向だ。豊田副
社長の叔父で1995年に退任した現相談役の豊田達郎氏以来で、14年
ぶりに創業家である豊田家出身の社長が誕生する。来週中にも最高首脳に
よる会合で内定し、6月末の定時株主総会後の取締役会で正式決定する。
トヨタは世界的な新車販売の不振で2009年3月期決算が連結営業赤字
に転落する見通しだ。昨年末以降、渡辺社長が続投して難局を乗り切る選
択肢なども検討してきたが、創業家出身の豊田副社長の昇格でグループの
求心力を高め、早期の業績回復を目指す。豊田副社長は、経団連会長も務
めた豊田章一郎名誉会長の長男。

 

創業家への大政奉還を決めたトヨタ自動車であるが、果たしてそれだけで
乗り切れるものであろうか。トヨタに限らず、我が国の自動車メーカーは
販売不振に喘いでおり、特に日本車が攻勢を強めていた米国市場が一気に
冷え込んだため、かと言って他の国で売り込もうにも、状況が改善される
ほどのインパクトはない。ホンダがF1からの撤退を決めたように、表彰
台が遠いトヨタにとっても、豊田副社長が就任後には撤退を決断する可能
性すらありうる。費用対効果を考えて、テレビCMや新聞広告を減らして
ネット広告へのシフトを強めることも予想され、メディアにとっては大ス
ポンサーから流れる広告費を失うこととなり、ますますの苦境に陥るだろ
う。トヨタは我が国を代表する企業だけに、その動向次第で多くのものも
動いてしまう。大政奉還が吉とでるか凶とでるか、注目したい。