麻生太郎首相は施政方針演説で小泉純一郎元首相の改革路線と一線を画す
姿勢を示した。社会保障財源のため消費税率引き上げをタブー視せず、安
全網を軽んじる「小さな政府」志向に疑問符を付けた。選挙管理内閣を脱
しようという意気込みが見えるが、9月までに必ずある次期衆院選で勝つ
シナリオを描けなければ画餅に終わりかねない。施政方針演説は8467
字。1982年の鈴木善幸首相の演説の次に短い字数だ。昨年9月の所信
表明演説で見られた「逆質問」による挑発は消え、語り口も比較的平易に
なった。「首相の基本理念を伝えたかった」(首相周辺)という。

 

麻生政権の支持率は低空飛行を続けているが、与党としては麻生首相で選
挙を戦う腹積もりは出来ているのではないか。安倍元首相、福田前首相、
そして麻生首相までが政権を投げ出す形で辞職すれば、もはや戦う以前の
問題であろう。少なくとも2009年度予算を成立させるまでは、解散は
出来ないであろうし、その必要もない。大半のメディアは反麻生の一色で
あり、麻生首相にとっては地道に、そして着実に政権運営をしていく以外
に選択肢はないのだ。そう言った意味も含めて施政方針演説はシンプルに
したのではなかろうか。いずれにしても、今年中の衆院選は避けられない
のだから、やることは全てやって臨まねば、自民党は大敗を喫するであろ
う。自民党が大敗では無く惜敗に踏み止まれれば、その後の政界は大きく
変わる可能性が出てくるはずだ。