オバマ米大統領は9日、ホワイトハウスで就任後初めて公式の記者会見を
行い、10日に上院で採決される大型の景気対策法案の早期成立を訴えた。
政権の最重要政策に掲げる景気対策で、オバマ大統領はバブル崩壊後の日
本が陥った「失われた10年」に言及し、米国経済の危機的な状況を回避
するために、大型の景気浮揚策を果断に進める決意を表明した。この日の
会見は、テレビの視聴率が高い米東部時間夜の「プライムタイム」に設定
された。景気対策法案をめぐっては、米議会で与野党の激しい論戦が続い
てきただけに、国民に直接訴えることで法案に世論の支持を引き付ける狙
いだ。冒頭の声明でオバマ大統領は、前月だけで約60万人が新たに職を
失うなど、米国の雇用情勢が極めて悪化している現実を指摘。景気対策
案による雇用創出効果が「400万人」に及ぶとして、「米国がすぐに必
要としているのはまさにこれなのだ」と、法案の早期成立を呼びかけた。

 

オバマ大統領が今すぐ取りかからなければならないのが、金融危機で傷付
いた経済を立て直すことである。そのために我が国のいわゆる「失われた
10年」について言及したようだが、即効性のある対策を打ち出せねば、
オバマ大統領に期待を抱く米国民の突き上げをくらうだろう。ひと月で約
60万人が雇用を失うなど尋常な事態では無く、手をこまねいている暇は
ないはずだ。だが、景気対策法案には「公共事業には米国製の鉄鋼を使用
する」という「バイ・アメリカン」条項が盛り込まれており、保護主義
見え隠れしている。米国が自国だけが良いと言う姿勢を崩さないようなら、
他国とて同じような手段に走らざるを得ず、結果的に世界貿易そのものを
停滞させるだけである。それを覚悟で景気対策法案を成立させようとする
のか、各国にとって目が離せない展開だろう。今回の金融危機による景気
後退は、世界を巻き込んでいる以上、米国単独で乗り切れるような事態で
は無い。「失われた10年」の二の舞にならないよう気を付けるのは結構
なことだが、国際協調なくして米国の復活は有り得ないことをオバマ大統
領は語るべきだろう。