羽生善治名人に郷田真隆九段が挑戦する将棋の第67期名人戦で、テレビ
放映されていた10日午前の対局中、羽生名人が44手目を考えていた際、
朝日新聞が委託した観戦記事担当のフリーの記者が、羽生名人に扇子を差
し出してサインを求める、という珍事があった。羽生名人は、一瞬驚いた
様子ながらも、応じた。将棋関係者は「前代未聞の事態」と首をかしげる
朝日新聞は記者に注意したうえで、「対局者に対して礼を失した行為で、
関係者に迷惑をかけたことを深くおわびします」とコメントを出した。

 

名人戦を観戦中の記者がいきなりサインを求める、これはテレビでも中継
されていただけに、サインを求められた羽生名人、そして視聴者も驚いた
ことであろう。朝日新聞広報部によると、この記者は1976年から99
年まで、同社嘱託として将棋の観戦記などを書き、その後もフリーの立場
で活躍したとのこと。また、羽生名人とも親しい関係にあるとのことだが、
どれほど親しかろうと対局中の棋士にサインを求める必要性が見当たらな
い。ベテランの記者であったらしいが、いささか傲慢に過ぎた行いであっ
たと言わざるを得ない。