1987年の朝日新聞阪神支局襲撃事件の実行犯を名乗る男性の「手記」
連載をめぐり、週刊新潮は16日発売号で、内容を誤りだったと認め、読
者と関係者に謝罪する内容の記事を掲載することが15日、分かった。記
事は「『週刊新潮』はこうして『ニセ実行犯』に騙された」と題し、早川
清編集長名で、10ページにわたり、男性を取材した経緯を掲載。その上
で、誤報の最大の原因として、「裏付け取材が不十分だった」とし、「男
性の主張する人物が実在しあいまいな対応をしたことで状況証拠が積み重
なったように錯覚した」「証言が詳細でリアリティーがあったため、真実
であると思い込んだ」「実名での告白を重く見すぎたこと」などを挙げた。

 

朝日新聞阪神支局を襲撃したと告白した男性は一部マスコミに対し「私は
実行犯ではない」と証言を翻しており、週刊新潮がどのような結論を出す
かに注目が集まっていたが、全面的に謝罪に追い込まれる結果となった。
週刊誌ジャーナリズムは新聞やテレビが報じない、また報じられないよう
な話題を掘り下げることで、その役割を果たしてきたと言えるが、一方で
羊頭狗肉の正に良い例である中吊り広告で、刺激的な見出しを展開して
購読に向かわせる面も持ち合わせていた。今回の手記も裏付け取材がきち
んとされていれば、掲載にはいたらなかったはずだろうが、内容が内容だ
けに、何としてでもモノにしなくてはとの焦りがあったのではないか。誤
報はメディアでは避け難いものかもしれないが、メディアには正しい情報
を提供する義務があることだけは忘れてはならない。