新型インフルエンザの感染者が急増する中、舛添要一厚生労働相は今週中
に対策を見直す方針を示している。検討課題の一つに挙げたのは、軽症者
の自宅療養。しかし、病床不足に陥った神戸市は既に踏み切っており、国
自治体の判断を追認した形だ。ウイルスの感染力を前に、厚労省が守勢
に回るケースが出始めている。第一例の確認から3日間で、感染者は10
0人を突破したが、政府の行動計画上は第二段階「国内発生早期」のまま。
舛添厚労相は「全国にまん延している可能性を前提に」と訴えるが、第三
段階「まん延期」への引き上げは見送られている。その理由について、同
省は感染者の接触状況を調べる積極的疫学調査が続いているためと説明。
「感染者同士のつながりを否定できなければ、まん延とは言えない」と二
の足を踏むが、結果のめどは立っていないという。医師が感染を疑う目安
の「症例定義」も、留意する渡航先はメキシコ、米国、カナダだけ。大阪
府や兵庫県との関連を探るのは事実上、医師頼みになっている。

 

現在のところ感染拡大が見られるのは関西に止まるが、間違いなく関東に
新型インフルエンザは襲いかかってくることであろう。すでに兵庫県
の感染者は、52人分の対応病床数を上回り、18日から入院は重症者に
限ると方針転換している。これによって、軽症者は自宅療養とする政府の
行動計画の第三段階を先取りすることとなった。やはり、計画通りには進
まないもので、感染の経路を探るだけで、相当な労力を注がねばならない
上に、その間にも感染者は増え続けることとなる。その都度、計画と照ら
し合わせていたのでは間に合わない以上は、各自治体が柔軟な判断をして
いく他ないだろう。現在、重症化した感染者がどれだけいるのかは不明だ
が、毒性については季節性インフルエンザと同等との報告を信じるのなら、
重症者、さらには死者が続出するような事態にはなるまい。だが、軽症者
にとって不安は尽きないであろうし、単に自宅に留め置くだけではそれを
取り除けない。患者数が少ないうちは、最低限のアフターフォローは実施
すべきではなかろうか。