与謝野馨財務・金融・経済財政担当相は17日、6月の月例経済報告を関
係閣僚会議に提出した。中国向けなどの輸出や、企業の生産に改善の動き
が続いていることを受け、景気の基調判断の表現から「悪化」の文言を7
カ月ぶりに削除し、「厳しい状況にあるものの、一部に持ち直しの動きが
みられる」に2カ月連続で上方修正した。会議後の会見で、与謝野経財相
は「1〜3月が底だった。輸出、生産などが上を向き始めたので底を打っ
たと強く推定できる」と述べ、事実上の景気底打ちを宣言した。今回の景
気後退は07年11月から始まり、昨秋の世界的な金融危機で急減速。昨
年12月から基調判断には「悪化」の文言が入っていた。今年5月の月例
報告で3年3カ月ぶりに上方修正され、4月の鉱工業生産指数が前月比の
上昇率で56年ぶりの高い改善となるなど、輸出や生産に関する経済指標
の持ち直しが見られたことから6月は一段の上方修正に踏み切った。報告
では、11の個別項目のうち「輸出」「輸入」「生産」「個人消費」「倒
産」の5項目の判断を上方修正。輸出は「下げ止まりつつある」から「持
ち直しの動きがみられる」に、生産は「持ち直している」に表現を改めた。

 

景気底打ちが宣言されたものの、それを実感している人はどれだけいるの
であろうか。確かに景気が悪い悪いと言ってばかりでは、ますます冷え込
みかねないわけだが、2002年以降拡大局面に向かい、2007年11
月まで続いたとされる「実感なき好景気」の記憶も新しく、バブル景気の
崩壊後から実感出来るような好景気が訪れたことはないのではなかろうか。
今回、米国発の金融危機によって崖から落ちるように、急激な景気後退に
襲われた我が国は、相も変わらず外需頼みであったことを再認識させられ
た。原材料を輸入し、それを加工して付加価値を付けた上で輸出する、こ
の一連の流れが米国の消費が一気に冷え込むことで、あっけなく破綻した
わけである。では、今後は外需依存から脱却出来る体制を作れるのかと言
えば、そう簡単な話では無い。我が国の財政事情は逼迫していると、嫌に
なるほど聞かされているように、税金が上がることはあれ、下がることは
無いであろうし、ましてや大幅な昇給など見込めない。内需拡大をスロー
ガンに掲げるには、いささか厳しい状況なのである。そんな中で景気の底
打ちと言われても、しらけるのが関の山だ。