プロレスリング・ノアは6日、東京都江東区の事務所で臨時株主総会と役
員会を開き、前社長だった三沢光晴さんの急逝に伴う新役員人事を決定し
た。新たな代表取締役社長には、田上明が就任。副社長には小橋建太と丸
藤正道が、取締役選手会長森嶋猛が就くなど、現役選手中心の新体制で
再出発することとなった。田上は生前の三沢さんから次期社長就任を打診
されており、三沢さんの真由美夫人からも先日、社長就任についての電話
があったという。「大変びっくりしています。自分としては社長なんて器
ではないと思っていた」としながらも「生前の三沢さんからも選手からも
言われていたので、それならば、と決意した」と話した。今後はプロレス
統一コミッション設立へ向けた他団体との協調など課題は多いが「三沢さ
んのつくってきたものを引き継ぎ、一丸となって盛り上げたい」と意欲を
見せた。

 

三沢前社長が試合中の事故によって急逝したことで、現役選手が社長業を
兼務することの難しさ、厳しさが改めて明らかとなった。苦境にあえぐプ
ロレス業界にとって、メジャー団体と言えども社長自らスポンサー集めや
金策に走り回らなければならない事実。当然、選手としての時間よりも社
長としての時間の比重が大きくなり、満足なトレーニングも出来なくなっ
てしまう。受け身の名手として知られていた三沢前社長が、相手選手のバ
ックドロップをかけられた後に心肺停止になったのは頸椎離断が原因との
ことだが、社長業の激務によるトレーニング不足と蓄積してきたダメージ
によるものが大きかったのではないか。新社長に就任した田上選手も48
歳のベテランである。同じ不幸を繰り返さないためにも、社長は普段は経
営に専念し、大一番で試合をするような体制に変えていくべきだろう。た
だ気になるのは、百田前副社長が新人事への不満を理由に辞表を提出した
ことだ。新体制が動き出して早々に分裂しているようでは、三沢前社長が
泉下で泣いているのではなかろうか。