中国の胡錦濤国家主席は、鳩山首相との初会談で行った5項目提案の中で、
気候変動や環境保護、エネルギーなど地球規模の課題を具体的な協力テー
マとして強調した。ただ、これらはいずれも、持続可能な経済発展のため
に日本の先進技術を獲得したい分野だ。胡政権は「靖国神社参拝など歴史
問題が焦点になる可能性は低い」と見ている鳩山政権時代に、できるだけ、
「互恵」の「うまみ」を得たい意向と見られる。一方、中国製冷凍ギョー
ザ中毒事件解決や東シナ海のガス田問題などで積極姿勢を見せるかは不透
明だ。「ガス田の共同開発の合意と実施は別問題」が本音で、大幅な譲歩
となるカードを切る考えはないようだ。「東アジア共同体」構想について、
中国は協調姿勢を表明。背景には構想実現で「日米同盟の弱体化、東アジ
アでの米軍の影響力低下につなげたい」との狙いがある。

 

鳩山首相胡錦濤国家主席との初会談で、「友愛精神に則り、日中両国が
互いに違いを認めながら、違いを乗り越え、信頼関係を構築していく。そ
れを軸に東アジア全体の共同体を構想していきたい」と述べ、日中間で懸
案になっている東シナ海のガス田開発問題については「いさかいの海から
友愛の海にするべきだ」と表明したものの、友愛の海とは中国側も苦笑し
たことであろう。友愛の海とは何を意味するのか。あまりに抽象的で観念
的であり過ぎる表現に、中国側にどう訳されたのかが気になるところだ。
事実、東シナ海のガス田開発は日中政府間で共同開発の一応の合意が成さ
れたものの、その後の継続協議は一度も開かれていない。さらに、共同開
発の協議対象である4カ所のガス田で、中国側が不当に単独開発を進める
など、相変わらず日中間の懸案事項となっている。これは領土と資源につ
いては一歩も譲らないと言う、国内向けの姿勢と思われる。そんな中、鳩
山首相がチベット問題を取り上げ「対話による解決を祈念する」と釘を刺
したのは、素直に褒めておきたいところだ。中国のアキレス腱である少数
民族問題は、人道・人権の面からも他国から注文が付いている。初会談で、
いきなりそこに踏み込んだことで、中国側は一歩引いて鳩山政権の対中姿
勢を再考することであろう。