政府が、09年度補正予算の財源となっていた「埋蔵金」約3兆円の10
年度当初予算への持ち越しを検討するのは、来年度の国債発行を極力抑え
たいとの思惑がある。その分、09年度の国債発行額が膨らむことになり、
「見栄え」の問題に過ぎない。多額の国債発行で財政の悪化は進むことに
は変わりない。 「今年度の税収は40兆円を割り込む可能性がある」。
藤井裕久財務相は20日の会見で、46兆円を見込んでいた税収が経済危
機の影響で大幅に落ち込む見通しを示し、落ち込み分は「国債の増発をも
って対応する」と明言。国債発行額は初めて50兆円を超える見通しにな
った。この時期に財務相が言及するのは異例だ。一方、来年度予算を巡っ
ては、今月15日に各省が提出した概算要求の総額は、子ども手当などの
新政策を盛り込んだため、過去最大の95兆円に膨らんだ。来年度も大幅
な税収増は見込めないが、鳩山由紀夫首相は国債発行を今年度補正後の4
4兆円以下に抑える方針で、財源確保が大きな課題になっている。

 

政権交代が最大の景気対策と叫んできた民主党だったが、景気後退が予想
以上に長引くことで、大幅な税収減は避けられそうにない。政権交代が実
現したところで、すぐに景気が良くなるわけも無いのだ。来年度も大幅な
税収増が見込めない以上、気前よく国債を増発していては、国の借金を増
やすだけに終わる。そうならないようにするために、今回補正予算を削減
して捻出した約3兆円を温存しておきたいのは分かるが、結局のところ来
年度予算の見栄えをよくするためのつけ替え、そう批判されても仕方ない
だろう。無駄の削減で財源を生み出す、そう言っていたのは民主党だった
はずだが、足りない分は国債に頼り続けるようでは自民党政権とは何ら変
わらない。国債を増発して、子ども手当を支給したところで、それは子や
孫の世代のツケを前借りすることに他ならないのだ。無駄遣いを無くして、
生まれてくるはずだった巨額の財源は、いつになったら示せるのか。民主
党はそろそろ語るべきではなかろうか。政権を手放したくないのは分かる
が、数字の帳尻合わせを繰り返していては、いつかはボロが出てくるのは
当然の帰結である。