欧州連合にとって、国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議は「期待
外れ」に終わった。米国、中国、日本が、それぞれ最低限の成果は死守す
る中、EUは排出量取引制度拡大へ向けた展望を描けず、「独り負け」の
様相も漂う。「正直に言おう。これだけでは気候変動の脅威を解決するこ
とはできない」。EU議長国スウェーデンのラインフェルト首相は19日
未明の記者会見で、「コペンハーゲン合意」の内容に落胆を隠さなかった。
米国には温室効果ガス排出削減の義務を負うと約束させ、中国など新興国
には、削減達成状況の国際的な検証受け入れをのませて各国の削減目標に
実質的拘束力を持たせるのが、EUの描いた筋書きだった。米中を説得し
た後は、最終局面でEUの削減目標引き上げも発表し、欧州世論に成功を
誇示するもくろみだった。

 

先進国と発展途上国との間で二酸化炭素の削減目標は大きな隔たりがある。
発展途上国のリーダー格であり、世界最大の排出国でもある中国は、あく
まで「温暖化の責任は先進国にある」として、削減義務を課されることを
一切拒絶している。さらに、自主的な削減目標は打ち出すが、第三者の検
証は受け入れないという姿勢を崩しておらず、そもそも交渉が成立してい
ない状況である。排出権取引制度を主導するEUにとって、明確な削減義
務を各国が負うことになれば、排出権取引をリードすることが出来る、そ
んな思惑を持ちつつも、現実はそう甘くは無かったようだ。我が国も鳩山
首相が90年比25%削減を打ち出したことで、その前のめりの姿勢が危
ぶまれたが、少なくとも「国益も大事だが、地球益も大変大事だ」などと
能天気なことを言っている場合では無い。