[政治]

鳩山由紀夫首相は8日午前、菅直人副総理・財務相外国為替相場の水準
に関し、1ドル=95円台が望ましいとの考えを示したことについて「為
替は安定が望ましいわけで、急激な変動は望ましくない。政府としては基
本的に為替に関しては言及すべきではない」と述べ、“口先介入”を控え
るよう求めた。ただ、菅氏は同日午前の記者会見でも円安が望ましいとの
認識を示し、閣内での認識のずれが浮き彫りになった。首相は菅氏の発言
に関し「経済界としてはという思いで言ったことだと思う」とも指摘し、
菅氏に発言を控えるよう求める考えはないとも説明した。首相公邸前で記
者団の質問に答えた。これに対し、菅氏は会見で「首相が言ったことは原
則としてその通りだが、経済界の期待、希望を十分勘案しなければならな
い」とし、円安を望む輸出関連企業への配慮が必要との認識を重ねて強調。
一方で「為替に対し何らかの行動をとる財務相の権能も自覚しなければい
けない。より重い立場にあることの自覚が必要だ」とも語り、発言に慎重
を期す考えも示した。

 

藤井財務相の辞任によって、菅副総理が国家戦略担当相からスライドして、
財務相に就任したわけだが、空いた国家戦略担当相を仙石行政刷新会議
当相に兼務させた。これによって民主党の目玉中の目玉であったはずの「
国家戦略室」が如何に軽い存在であったかが良く分かる。国家戦略を描く
には、専任の大臣を置いてしかるべきだろうが、鳩山首相はその選択をせ
ず、兼務させてしまったようだ。むろん、小沢幹事長の横やりもあって、
思うような人事が出来なかったとの見方も出来るが、いずれにしても今回
の人事は失敗ではないか。財務相自らが「円安が望ましい」と公言してい
るようでは、先が思いやられるばかりで無く、自民党からは「すぐカッと
なる方なので攻めやすい」と就任を歓迎する発言すら飛び出している。ポ
スト鳩山に一番近い存在とされるものの、内閣の足を逆に引っ張るような
事態ともなれば、党内を仕切る小沢幹事長の不興を買うことは必至である。
偽装献金問題で大きく傷付いた鳩山政権だが、その前途は洋々とはいかな
いようだ。