菅直人副総理兼財務・経済財政担当相は29の衆院本会議で、財政演説と
経済演説を行った。財政演説では、2010年度予算案の年度内成立が必
要不可欠と訴える一方、今年前半までに財政健全化への道筋を示す方針を
表明。経済演説では、新成長戦略を通じ経済成長を実現すると強調し「デ
フレの克服に向け日銀と一体となって強力かつ総合的な取り組みを行う」
との姿勢を示した。財政演説では、10年度末に国と地方を合わせた長期
債務残高が862兆円に達するなど膨張する財政赤字について「極めて厳
しい状況」と指摘。その上で「財政に対する信認を確保することは、活力
ある経済社会の基盤になる」と財政規律維持の必要性を訴えた。その上で
「経済成長との両立を図りつつ、財政健全化に取り組む」との方針を示し
た。経済演説では、日本が保ってきた世界第2位の経済大国の地位を中国
に譲る可能性に言及した上で「成長戦略を推進することで新たな成長を実
現できる」との考えを強調した。 

 

民主党の予算を考える上で、例えば防衛費よりも金額が大きくなる子ども
手当(5.3兆円)が妥当なものなのか、そもそも巨額の財源をどこから
安定的に調達するのか、多くの疑問が出てくるのだ。民主党は必要な財源
は「予算組み替え」や無駄削減で確保できると主張してきたわけだが、そ
の財源はいつになったら具体的な数字が分かるのだろう。毎年1兆円規模
の自然増が見込まれる社会保障費に対応するだけでも一苦労だと言うのに、
862兆円にも上る国と地方の債務をどうするのか。理念先行で肝心の財
政規律が守られないようでは意味が無い。例えば「成長戦略を推進するこ
とで新たな成長を実現できる」と菅副総理は言うものの、その戦略とは何
なのか。すでに民主党政権の試用期間はとうに過ぎている。そろそろ具体
的な内容を国民に向けて発表する時ではなかろうか。