沖縄の米軍普天間飛行場移設問題は、鳩山首相が公約する「5月末の決着」
が10日、ほぼ絶望的となった。政府がまとめた新たな移設案は実現可能
性が低いとして、米側が実務者による協議入りを拒否し、日本側が同日、
協議開催を当面断念する方針を固めたためだ。首相がヘリ部隊の移設先と
して重視する鹿児島県・徳之島でも、地元首長が政府関係者との会談を拒
否したことが同日判明するなど反対が広がっている。移設問題は、対米、
国内双方の調整が行き詰まり、打開のメドが立たない状態となった。鳩山
首相の政治責任が厳しく問われるのは確実だ。岡田外相は10日夕、日米
間の実務者協議について、「必ずなければいけないものではない。実務者
同士でなくとも、移設案を詰めるやり方はある」と述べ、当面断念する考
えを示した。神奈川県横須賀市内で記者団に語った。

 

基地の移設の大前提として地元の理解が必要である。補助金をバーターに
移設したところで、理解が得られないままでは、安定的な運用に支障が出
ることだろう。平野官房長官が徳之島が含まれる衆院鹿児島2区選出の徳
田毅衆院議員に「何か知恵を貸してくれ」と要請したが、徳田氏は「徳之
島は絶対に駄目だ」とあっさり拒否され、すでに政府案としては破綻した
状態だ。米国側は日本側が説明した案について、米軍の運用面で現実的で
ない、受け入れ先の地元合意がない、移設実現の期限が不明などと指摘し、
実務者協議入りを拒否している。ここで気になるのが、鳩山首相自民党
の谷垣総裁との党首討論で口にした「腹案」なるものの存在だ。政府案=
腹案なのか、それとも違うものなのか。負担軽減策として「現行案と同等
かそれ以上の効果がある」と鳩山首相は発言したが、行き詰った現状を打
破するためにも、今こそ腹案を出すべきではないか。それとも、その場し
のぎの発言だったとすれば、その責任は重大であろう。