[政治]

米軍普天間飛行場移設問題で、鳩山由紀夫首相が28日、鹿児島県・徳之
島の有力者、徳田虎雄衆院議員との直談判でヘリ部隊の同島移転に協力
を求めたのは、何とか事態を動かしたいとの一心からだ。しかし、徳田氏
は即座に拒否し、苦し紛れの説得工作はいきなり壁にぶち当たった。首相
の打つ手がことごとく後手に回った結果、対米公約の「5月末決着」は絶
望的になった。「徳之島に関する報道がいろいろあり混乱させていること
は大変申し訳ない」首相は約1時間の会談の冒頭でこう言って頭を下げた。
混乱の原因は「腹案」を明かさないまま非公式なルートで徳之島移転を打
診した首相の稚拙な手法にあるのは明らかだが、責任を報道に押しつけた
格好だ。徳之島では今月18日に主催者発表で1万5千人規模の反対集会
が開かれた。その直後に平野博文官房長官が移転反対の徳之島3町長との
面談を打診したが断られたため、首相は徳田氏の威光にすがり、ようやく
面談の約束を取り付けた。

 

徳之島の有力者である徳田氏に直談判して何を得ようとしたのか、鳩山首
相の考えには呆れるばかりである。徳之島の住人からは猛反発を受けてい
る中で、頭ごなしに有力者に会うこと自体、おかしなことではないか。当
然、徳田氏は鳩山首相の提案を拒否し、万事休すとなった。それでも政府
案として固まったのは、沖縄県名護市辺野古キャンプ・シュワブ沿岸部
を埋め立てる現行計画を修正し、沖合でのくい打ち桟橋工法に変更、鹿児
島県・徳之島に沖縄の米軍ヘリ部隊を最大1千人規模で移すか訓練の一部
を移転する案が軸とされ、鳩山首相自らが5月4日に沖縄入りし、仲井真
知事に伝える意向のようだが、知事が消極的賛成であったとしても、反対
派が市長選で勝利した名護市を納得させるのは難しいだろう。第一、有力
者の威光にすがること自体が、徳之島の住民にとっては度し難いことだっ
たのではなかろうか。