沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題で、政府がヘリコプター部隊の移転先
として検討している鹿児島県・徳之島の3町長らは7日午後、鳩山首相
首相官邸で会談後、記者会見して「飛行場移設は絶対反対という民意は決
して変わらない。これからますます強くなる。首相が来ても、お会い出来
ない。会っても平行線だから」と語った。大久保明・伊仙町長は「首相の
発言は予想通り、何とか引き受けていただきたいという気持ちはわかった
が、民意は反対という正しい情報を伝えられた。その点では意味があった」
と述べたうえで、「徳之島は長寿世界一が2人も出て、出生率も日本一。
少子高齢化対策のモデルの島であり、地域力の残る島に基地は必要ない」
と反対姿勢を改めて強調した。大久幸助・天城町長も、「サトウキビ生産
などの農業立島であり、基地が来ると土地が取られて農業がダメになる。
希少な動植物がいるので世界遺産に登録する話もある」と述べ、大久保町
長は「地元記者から『沖縄に押しつけるのか』と聞かれるが、基地の議論
ではなく、首相はオバマ米大統領と会い、軍縮の議論をしてほしい」と語
った。高岡秀規・徳之島町長は「今回の会談でわかったのは、基地は強制
的には来ないということと、米国との調整がついていないこと。徳之島案
はなくなるのではないかと期待して会談を終えた」と感想を述べた。

 

鳩山首相の「腹案」が辺野古と徳之島への分散移設だったとすれば、これ
ほど場当たり的なものはないだろう。当然、沖縄側、徳之島側からも交渉
を拒絶されてしまい、5月末の決着は絶望的となった。会談後に会見した
3町長は口をそろえ「何十回会っても平行線。会っても意味がないので、
もう会わない」と斬って捨てている。結局のところ、鳩山首相の足を引っ
張っているのは自身の「最低でも県外」との発言である。沖縄の県内移設
と徳之島への一部県外移転を組み合わせようと言うのが首相の考えなのだ
が、もはや県外移設と言う面子のためにとしか思えない。それだけに徳之
島の住民にとっては、納得出来るわけも無く、鳩山首相の「腹案」は頓挫
してしまった。しかし、ただ頓挫しただけで無く、現行案に立ち戻るのも
難しいのが、問題を複雑なものとしている。名護市長選で移設反対派が勝
利したことで、これまで地道に進んできたものが、全てゼロベースになっ
てしまったのだ。鳩山政権がどのように解決を図るつもりなのか、単なる
先送りでは意味が無い。現行案を否定したのは、他でも無い鳩山首相であ
る。今度ばかりは他人事では済まない。