[政治]

沖縄県の米軍普天間飛行場の移設問題で、鳩山政権が同県名護市の辺野古
沿岸部に検討している「くい打ち桟橋方式」と並行して、周辺環境への影
響を最小限にとどめた形での埋め立ても検討していることが明らかになっ
た。ただ、鳩山由紀夫首相が決着期限としている5月末までに米側と具体
的な工法については合意できない見込みで、6月以降も米側と調整を続け
る方針だ。現行案の埋め立ては、海砂などを使うことが想定されており、
海の環境への悪影響が指摘されている。政権内で浮上している埋め立て案
は、公共工事などで海に流れ込んだ赤土などがもとになったヘドロを掘り
返して使う構想。周辺の海洋環境を再生するほか、埋め立て地内に水路を
造り、サンゴ礁や藻場の定着などを促進して新たな生態系作りも視野に入
れている。政府関係者によると、鳩山首相自身も関心を示しているという。
首相が移設問題の「5月末決着」を掲げていることから、日米は何らかの
形で合意文書を作る方向で協議を進めている。政府高官は「具体的な工法
は文書に盛り込まない方向だ」と語り、その後も調整が続く見通しだ。

 

ここで埋め立て方式を選択すると言うことは、現行案をほぼ踏襲すること
と同義である。現行案で可能な限り環境に配慮した形に修正する、と改め
て宣言する以外に選択肢は無いだろう。鳩山首相が押していた桟橋方式に
ついては、米国側は新たな環境影響評価が必要になる可能性があり、移設
が現行案より大幅に遅れる可能性があることや、構造上の弱点などから難
色を示しており、それをひっくり返すだけの腹案があるわけもなく、現行
案に限りなく近い案に落ち着かざるを得ないだろう。それとも県外移設を
諦めきれずに、ズルズルと結論を先送りにすると言うのか。もはや5月末
の決着が難しくなった以上、鳩山首相は判断をすべきだろう。普天間基地
を2014年までに移設するには、現行案でいくしかないと、関係自治
に頭を下げて回る、それぐらいの覚悟は必要だ。それとも普天間基地はそ
のままに、全国各地に移設候補地を探して回ると言うのか。今の鳩山政権
は泥縄式に案を打ち出しては没になり、時間だけを浪費しているようにし
か見えない。そろそろ現実に目を向ける時間だろう。