[政治][対朝]

仙谷由人官房長官は7日の日本外国特派員協会での記者会見で、韓国との戦
後処理について質問を受け、「一つずつ、あるいは全体的にも、この問題を
改めてどこかで決着を付けていくというか、日本のポジションを明らかにす
る必要があると思っている」と述べ、従来の政府の対応は不十分だとの認識
を示した。これに関連し、仙谷氏は同日の記者会見で、日韓請求権協定で消
滅した個人の請求権について「法律的に正当性があると言って、それだけで
いいのか、物事が済むのかという話だ」と述べ、政治的判断で個人補償を行
うべきだとの考えを示唆した。仙谷氏の発言は日韓両国の間に波紋を呼ぶ可
能性がある。仙谷氏は、在韓被爆者援護や朝鮮半島出身者の遺骨返還、在サ
ハリン韓国人支援などを挙げ、「案件は多々ある」と述べたが、具体的な対
応には言及しなかった。また、日韓請求権協定については「当時の韓国は軍
政下だ」と指摘した。

 

日韓合邦から100年の節目とは言え、仙谷氏が韓国との戦後処理について、
個人の補償まで行うべきとの考えを示したのは、如何なものか。第一、日韓
基本条約を締結した際に、当時の韓国の国家予算の1.45倍にあたる5億
ドルが供与されている。これは我が国の植民地支配による個人の未払い賃金
を含む一切の対日請求権を放棄する見返りであり、その5億円を使って韓国
側が個人補償をすれば済んだ話である。韓国側では「ご都合主義的な政治的
妥結」として、再交渉を求める動きもあるようだが、2国間の約束事である
条約を無視するのは我が国としては受け入れられない。弁護士資格を持つ仙
谷氏の口から「法律的に正当性があると言って、それだけでいいのか、物事
が済むのかという話だ」との言葉が出たことは問題ではないか。個人補償を
実施して、我が国にとって何のメリットがあるのか。大臣として説明する責
任があるのではなかろうか。