広島はあの日から65年の朝を迎えた。6日午前8時15分、平和記念式典
で黙とうする参列者の中には、国連の潘基文事務総長、英仏の代表、そして
米国のルース駐日大使の姿があった。原爆を投下した国と被害を受けた国。
世界的な核軍縮の潮流の中、初めて並んで祈りをささげた<歴史的な一日>
に、被爆者らは「今日ここで胸に刻んだことを米国に伝え、『核兵器なき世
界』を実現させてほしい」と願いを込めた。ルース大使は午前7時30分頃、
式典会場の平和記念公園に到着。来賓席では、広島市秋葉忠利市長から声
をかけられると笑顔で握手を交わし、着席した。だが、式典が始まると、一
転して厳しい表情に。原爆投下時刻には起立し目を閉じて黙とうをささげた。

 

人類が生み出した核兵器は今なお、世界を何度も滅ぼしうる数が配備されて
いる。その数を減らす努力は続いたものの、新たに核兵器を持とうとする国
は後を絶たず、冷戦期よりも核保有国は増えてしまった。昨年の4月に米国
オバマ大統領が「核なき世界」を訴えたわけだが、今回のルース大使の参
列も、その一環として実行されたのかもしれない。むろん、オバマ大統領と
て、自身が訴えた「核なき世界」が今すぐに実現するとは考えておらず、非
常にハードルの高いと認識している。唯一の被爆国として我が国が出来るこ
とは何か。核や弾道ミサイルを持てば米国と対等になれると驕る、そんな国
々を増やさないことであろう。国民が餓死しようとも、核にのみ耳を貸すよ
うな馬鹿げた考えを捨てさせる、核なき世界を目指す上で欠かせない努力の
一つではなかろうか。