仙谷由人官房長官は29日午前の記者会見で、尖閣諸島沖での中国漁船衝突
事件で悪化した日中関係について「ゼロのところに直す努力をされ始めたの
かなと推測している」と述べ、中国側が関係改善に向けて動き始めたとの見
方を示した。その上で「マイナスをゼロにする作業は、ハイレベルまでいか
ずともやっていただかないと」と強調。一方、仙谷長官は、事件発生直後に
船長を除く船員14人を帰国させて船体も返したことについて「その時点で
は、外交ルートを通じてそういう情報が私のところに上がっていた。中国側
も理解してくれるだろうと判断していた」と説明。ただ、中国はその後、態
度を硬化させており、仙谷長官は「司法過程の理解が全く異なることについ
て、われわれが習熟すべきだった」と語り、中国側の出方を読む上で判断の
甘さがあったことを認めた。 

 

仙谷氏が言うように、中国側の出方を本当に読めなかったのだとすれば、菅
政権に外交を任せることは出来ないだろう。出方が読めなかったでは済まな
いほど我が国の国益を損ねただけで無く、中国人船長と言うカードを切って
しまい、何の手持ちが無い状況に追い込まれた。どのように日中関係を改善
させていくか、そして同じように中国側の船が尖閣諸島の海域に侵入してき
た際、毅然とした対応が取れるのか。中国人船長の釈放後、中国の海洋調査
船が尖閣諸島東シナ海のガス田開発地域周辺に10隻以上集結しているこ
とが分かっており、菅政権がその場しのぎの対応をしたことで、中国側がさ
らに踏み込んできていると言うことだろう。「漁船→海洋調査船→軍艦」と
徐々に圧力をかけ、既成事実を積み重ねていくことも予想される。判断が甘
かった、と今さら言っても遅いと言わざるを得ない。