菅直人首相は4日夜、アジア欧州会議首脳会議の開かれているベルギー・ブ
リュッセルで中国の温家宝首相と約25分間、会談した。両首脳は沖縄県
尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で悪化した日中関係について「現在の状況は
好ましくない」との認識で一致。両国が戦略的互恵関係を進展させるほか、
ハイレベル協議の開催や民間交流を復活させることを確認した。9月の中国
漁船衝突事件後、日中首脳が会談するのは初めて。官民の交流再開を通じて、
関係修復に向けた動きが強まるとみられる。菅首相によると、温首相との会
談では今年6月の日中首脳会談で合意した「戦略的互恵関係を進展させると
いう原点」に立ち戻り、今後の関係修復に取り組む意向を確認した。一方で、
菅首相尖閣諸島について「我が国固有の領土であり、領土問題は存在しな
い」との日本の立場を表明。温首相も自国の領土との原則論を主張した。

 

会談はASEM首脳会議の夕食会が終わった直後、廊下の椅子に座る形で約
25分間にわたって行われたようだが、自然な会談を装おうとするあまり、
かえって不自然さが際立つ会談となった。政府としては25分間とは言え、
会談出来たこと自体の意義を強調したいのだろう。むろん、中国側とて行き
過ぎた反日感情の高まりは押さえておきたいであろうし、いつまでも対立姿
勢を強めるのも好ましいものでは無い。核心的利益なる言葉で、我が国固有
の領土である尖閣諸島を自国領であると位置付け、今後もその主張を取り下
げないだろう。この会談によって、拘束されているフジタの社員が早期に解
放される可能性は高まったが、その交換条件として、中国の漁船が巡視船に
衝突した「証拠ビデオ」の公開が封印されはしないだろうか。「我が国固有
の領土であり、領土問題は存在しない」だけの原則論で日中関係がうまくい
くとは思えない。今後、どのように中国と付き合っていくか、真剣に考える
べきだろう。