政府・与党は8日、沖縄県尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件の際に海上
安庁が撮影したビデオ映像の扱いに関し、全面公開とはせず、国会議員の一
部に限って開示する方向で検討に入った。開示対象としては予算委員会理事
などが念頭にある。これに関し、政府高官は同日、限定的な開示について「
そういう決め方があるかもしれない。委員会の判断だ」と語った。ビデオを
公開した場合、日中関係修復への動きを見せ始めた中国側の反発を招く可能
性が強い。ただ、野党や与党の一部には公開を求める根強い意見があり、国
会運営上は全面的には拒否しにくい状況。このため政府・与党は、限定的な
開示なら可能との判断に傾いている。 

 

日中関係が一応修復に向かっている、と政府は判断しているようだが、この
ままビデオ映像が封印されてしまうのは、果たして正しいことなのだろうか。
最後まで拘束されていたフジタの社員も解放されたのも、ビデオを公開しな
いことの取り引きだったとすれば、中国側にとっては全く損は無い結果とな
るのだ。あくまで尖閣諸島は我が国固有の領土であり、ここまで譲歩したこ
とで、中国側はさらに押してくるのではないか。そもそも、事態を複雑にし
たのは菅政権の失策であって、形だけ日中関係を修復して終わりでは済まな
いだろう。公開をすれば中国側の明らかに非があることが分かってしまう、
それが何の問題なのか。譲った分、相手も退いてくれる、そんなことを考え
ているようでは、国益を失うばかりだ。