「来るのが遅い」。菅直人首相は2日午前、岩手県陸前高田市の避難所のひとつ、米崎
小学校体育館を訪問した。固い床にマットを敷かれただけのブースに、滞在時間はわず
か20分。早急な対策を望む声があがる一方、後手後手の対応に「何をしに来たの?」
という冷めた視線もあった。自宅が津波に飲み込まれた無職、大坪涼子さんは「首相は
少し来るのが遅いような気はする。もっと時間をかけて多くの被災地をめぐり、被災者
の声を聞いてもらえるといい」と複雑な表情を浮かべた。心臓に持病を抱える藤丸孝義
さんは「いつまでも共同生活をしているのでは、精神的にも体力的にもつらい。仮設住
宅も一向に進んでいる気配はない」と話した。

 

どう言い繕っても、避難所の訪問などパフォーマンスに過ぎないだろう。震災の発生か
ら3週間が経ち、避難している住民達の疲労の色が濃くなる中、今さら首相に来てもら
っても、余計に疲れるだけだ。大津波によって壊滅した沿岸の町は陸前高田市以外にも
多数あり、もはや現場を実際に見て対応出来るレベルを超えている。上がってくる情報
を集約して、対応していく以外に無いだろう。「何をしに来たの?」との疑問が出るの
も当然ではないか。菅首相は満足かもしれないが、たった20分の滞在で分かることな
どたかが知れている。想像以上の被害に、菅首相が描いていた復興の青写真が破綻した
のが唯一の収穫かもしれない。