東京電力の武藤栄副社長は26日、福島第一原子力発電所1号機で東日本大震災の発生
翌日に、同社が冷却用の海水注入を中断していたとされる問題で「注入中断はなく、継
続していた」と発表し、21日に政府・東電統合対策室が公表した調査結果を訂正した。
原発吉田昌郎所長が、事態の悪化を阻止するためには注水継続が必要と判断し、中
断を見送っていたという。統合対策室はこれまで、東電が3月12日午後7時4分に海
水の試験注入を始めた後、原子炉の「再臨界」の可能性を懸念した官邸の意向に配慮し、
同25分に独断で注入を中断したとの調査結果を公表。しかし、公表翌日の22日には、
班目春樹・内閣府原子力安全委員長が、再臨界に関する自分の発言内容が異なると抗議
し、調査内容を訂正していた。

 

二転三転した海水の注入を中断した問題だが、実は海水の注入は中断していなかったと
言う「新事実」が浮上してきた。もともと、海水注入を中断するように誰が指示をした
のか、その辺が曖昧になっていた。未曾有の震災に襲われ、官邸が大混乱に陥っていた
のが良く分かる状況だ。政府が訂正や釈明をするたびに「新事実」が浮上し、野党に追
及されており、今回の「新事実」によって政府はまた釈明せざるを得ないだろう。東電
が官邸の意向に配慮し、注入を中断したとの調査結果が根底から覆り、本当に調査をし
たのかと疑われる結果になってしまった。結局、その調査結果も訂正する羽目になり、
政府発表の信用は地に落ちた。海水注入の中断が無かったことで、政府の指示によって
最悪の事態が引き起こされたわけではない、と強弁しかねないのが今の菅政権だが、こ
こまで話が二転三転したことの検証は必要である。