野田佳彦首相は22日午前、国連本部での「原子力安全首脳会合」の冒頭で演説した。
首相は東京電力福島第1原発事故について「津波への備えに過信があったことは疑いが
なく、非常用電源やポンプが津波で水没する場所に設置されるべきでなかったことは明
らかだ」と安全対策への不備を明言。「炉心損傷に至る過酷事故を想定した準備も不十
分でベント作業に手間取り貴重な時間を失った」とも語り、原発安全性の総点検を進め
る方針を表明した。その上で「事故は着実に収束に向かっている」と強調。「事故のす
べてを迅速かつ正確に国際社会に開示する」「安全性を最高水準に高める責務を担い行
動することを誓う」と表明した。また原発利用を模索する新興国に対し「今後ともこれ
らの国々の高い関心にしっかりと応えていく」と述べ原発輸出を継続する考えを示した。

 

菅前首相が掲げた脱原発依存については言及せず、原発の安全性向上に向けた決意表明
となったようだ。我が国のエネルギー政策については「再生可能エネルギーの開発・利
用の拡大も主導する」とし、来夏をめどに中長期的なエネルギー計画を発表する方針を
表明している。藤村官房長官は来年夏に向けて原発の再稼働を進めるとした政府方針に
ついて、来年2月をめどに前倒しする可能性に言及しており、定期検査中の原発の再稼
働が視野に入ってきた。思えば菅前首相の「脱原発」はあまりに唐突で、一部の閣僚か
らは反発を受け「個人的な考え」と付け加える有り様であった。そう言う意味では野田
首相は現実的な路線を選んだ、と言えるかもしれない。今、政府がすべきなのは福島の
原発事故を早期に収束させることだ。